【インタビュー】プロになれる保証はない。在学中のやりきった経験を胸にヘリ操縦士を目指す【後編】

フライトにドはまりし、休学してお金を貯め、飛ぶためにアメリカに通い…学業の傍ら、いや飛ぶことがメインの学生時代を過ごされた綾部さん(詳しくは前編に)。そろそろ卒業が見えてきた4年生の秋、周りからは遅れをとるも、進路について真剣に考える時期に…

自分の気持ちに従い
パイロットとして航空業界を目指す

オデン:ようやく大学卒業後のことが具体的に進むんですね?

綾部さん:卒業後1年遅れで就活しようかと考えたこともあり、そのときに「道しるべ」を訪ねました。相談に乗ってもらううちに「自分は飛ばないと満足できないんだ」とはっきりと自覚したんです。

オデン:パイロットになろうと決心されたんですね。

綾部さん:はい。それで、エアラインの自社養成(※)を受けるか、ヘリコプターのパイロットのスクールにいくか、アメリカでお世話になったところでグライダーの仕事を手伝うか、3つの選択肢で、迷っていました。
※ 会社員として給与をもらいながら訓練を受けパイロットになったらその会社で働く制度

オデン:乗り物が違う3つですね。

綾部さん:まずエアラインは、エントリーシートを書いているとき、動機を書くじゃないですか。そのときなんか違うなって感じて。合わないというか…、お客様の顔が見えないし、やりがいを感じなさそうだなってことで最初に選択肢から外れました。

オデン:残りふたつ…

綾部さん:どちらもお客様と近いですけど、ヘリは自衛隊員やカメラマンを乗せ、それぞれの任務にあたる。自分の技量や対話能力等がその方の仕事にダイレクトに影響します。ものすごい高いレベルが要求され、自己満足の世界とは一線を画すもので、こっちだなって。

オデン:なんだかすごすぎます…。結構悩まれましたか?

綾部さん:3~4か月は悩んだと思います。両親にも先の3つの選択肢がある話をして、自分がいきたいのはエアラインではないんだと言ったら泣かれました。飛行機のライセンスをとった時点で親としてはエアラインに行きたいのかなって勝手に思っていたみたいです。

オデン:そう思うのも無理ないですね。

綾部さん:アメリカに行くって話もそう捉えてたみたいで。

オデン:親御さんからしたら晴天の霹靂。どう説得したんですか?

綾部さん:お互い相当粘りましたね。何回も説得を試みました。ヘリは飛ぶのに燃料費などすごくお金がかかることもあり、スクールもすごく高いんです。気持ちだけでやっていける世界ではないので、きちんと計画を立てて、親にプレゼンをして。

オデン:おお、すごい…

綾部さん:人の本気は伝わるものなのか、最終的には家族の了承を得ることができました。

プロへの道は超難関
やりきった経験からうまれた自信と決意

 

オデン:それで大学卒業後は、スクールに入られ今訓練の真っ最中なんですね?

綾部さん:はい。事業用ライセンスをとるため、スクールに通って、訓練を受けているところです。

オデン:ライセンスを取るまではどのくらいかかりますか?

綾部さん:個人差はありますが、約1年ですかね。長い人だと2年くらいです。私も来年には取得したいと思っています。

オデン:そしたら就職ですね。スクール経由で(就職の)話がきたり?

綾部さん:稀にヘッドハンティングされる方もいますが、ライセンスを持っていても就職できない方もいる世界で…。ライセンスが取れてようやく就職活動のスタートラインです。

オデン:無事合格しても就職できないんですか!?

綾部さん:えっと、わかりやすくいうと、ライセンス試験は70点で合格ですけど、就職試験は90点とか95点とか満点近くを求められます。

オデン:そうですか…。ヘリ操縦士に必要な要素は、身体能力や頭の良さとかですか?

綾部さん:操縦技術、知識、判断力、人間性などたくさんあって一言では言い切れません。でも今訓練をしていて効率性がかなり大事だなと感じます。

オデン:効率性ですか。

綾部さん:たとえば、就職したときにこの機体を乗りこなしてくださいって課題が与えられる。それが10時間でできるか、20時間かかっても乗りこなせないとか。あまりに時間がかかりすぎることが続くと、操縦士としては首切られちゃうわけですよ。

オデン:シビアな世界…

綾部さん:自分でどうしたら最短でできるかを考えて研究していかないと、今の私には20時間って相当難しいですから。

オデン:ヘリっていったら、救命救助や報道の場面で目にしますが、操縦士の雇用形態ってどうなっているんですか?

綾部さん:運送、防災、消防、警察、報道、観光とヘリの出番は多種多様です。警察と消防は国の機関ですね。民間は報道や運送に特化した会社や部門を多数もつ総合的な会社があります。私も希望の業種はありますが、選り好みせずに募集があったところに受けにいく感じになると思います。

オデン:とりあえずどこかに入れって感じなんですね。

綾部さん:操縦士は飛行時間と自身の技量がすべて。小さい会社にいても技量があれば、大きいところから引き抜きもありますし、飛行経験を得て他に移ることもできます。

オデン:プロスポーツ選手みたいなところありますね。最後に教えてください!すごい挑戦をされていると思うんですけど、それを決断できたのはなぜですか?

綾部さん:4年の秋、進路に迷っていたとき、前に話を聞きにいった操縦士さんのインタビュー記録をもう一度読んだんです。今なら、自分がプロの操縦士になる道のりが想像できると直観的に感じて。たぶん4年の春と夏のアメリカで、めちゃくちゃなスケジュールの中やりきったという経験が自信につながっていると思います。

オデン:道しるべ編集部をあげてヘリ操縦士の夢を応援します!

まとめ

本文中では触れませんでしたが、パイロットになるにはすっごくお金がかかるそうです(医大に行く以上といってもいいくらい!)。その負担も背負った上での挑戦、ほんとスゴイの一言です。この大きな夢を支えているのは綾部さんのとてつもない行動力によって得た経験の数々なのだと感じました。

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書いた人:しごとの道しるべ 編集部員 オデン

新卒で入った会社は、先生と呼ばれる親より年上の所長とふたりきりの職場でした。入社後すぐの挨拶まわり、スーツを着た人がみな同じに見えて、同じ方に2度自己紹介をするという失態が忘れられません。現在は、育児と仕事の両立に格闘中。

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