【インタビュー】プロになれる保証はない。在学中のやりきった経験を胸にヘリ操縦士を目指す【前編】

今回インタビューを受けてくれたのは、なんと!ヘリコプターの操縦士を目指している20代の女性です。筆者の感覚的に“なんと”とつけてしまいましたが、ヘリ操縦士の免許取得者は年間約100人ほどだそうです。就職してプロとなるのはその半分くらいとの情報も。超レアな職業であること間違えなさそうです。
そんな超レアな方がなんと!!大学在学中にココ「道しるべ」に進路相談にきてくれていました。大学卒業して半年、現在はほぼ休みなしで訓練に励む綾部さん(仮名)。インタビューでは、楽しくて愛しすぎた飛ぶことを、職業として考えた意識の変化や就活の話、それから想像もつかないパイロット業界の話などをお聞きしました。

大学でグライダー部に所属するも劣等生に。
単独渡米で、フライトに魅せられる!

オデン:大学でグライダー部とはすごいです…。入部のきっかけは何だったんですか?

綾部さん:中高と剣道をしていたので、大学でもやろうと考えていましたが、入学した年に事故により休部になっていて…。グライダー部は、友達の付き添いで見に行ったら、楽しそうで、入部を決めました。

オデン:そもそもグライダー部ってどんなことをするのか、全くイメージが湧かないのですが…

綾部さん:マイナーなのでご存知ないと思うんですけど、グライダーはスカイスポーツとして関東大会や全国大会があります。所属していた部では、全国大会優勝を目指していました。まずは乗れるようになるための練習を1年次から始め、うまい人は4年生で全国大会に出ます。

オデン:スカイスポーツと言うんですね。かっこいいです!

綾部さん:でも、私は合宿や機体の整備など部活動には全て参加していましたが、操縦技術も機体整備といった仕事の覚えの面でも、確実に劣等生で…

オデン:最初は躓き気味だったと。

綾部さん:そんななか、2年生の夏にひとりでアメリカに飛びに行って、初めて飛ぶことが楽しく感じて!

オデン:アメリカで飛ぶって気持ちよさそうですね。

綾部さん: 3年生になるタイミングで休学して、1年間アルバイト生活して再度アメリカに行くための資金を貯めました。

オデン:休学⁉ それはまた思いっきりましたね!

グライダーのライセンスに挑戦。
失敗に終わるも、心に火がついてしまった!

綾部さん:復学した3年の夏にグライダーの自家用免許(※)を取るという名目で再度アメリカへ行きました。
※自家用ライセンス(一種)は趣味用で人を乗せてお金をもらうことはできない。事業用ライセンス(二種)は、人を乗せて飛び、代金をもらえる。プロとして働くには二種が必要。

綾部さん:でもそのときは準備不足で、試験を受けるまでいかなかったんです。

オデン:その世界がまったくわからないのですが、どういうことですか?

綾部さん:自分の甘さが原因というか…、今まで部活動で飛んでいたので、みんなの流れにのっていればよかったんです。

オデン:なるほど。

綾部さん:フライトの技術にしても、自分から知ろうとしなくても、先輩が教えてくれました。そこまでの世界しか知らないまま、一人アメリカでグライダーの免許を取るってなって、英語の勉強から始まり、フライトの座学、フライトの練習、ぜんぶ一人でやっていかないといけなくて、時間が足りず…

オデン:試験まで至らずだったと。

綾部さん:悔しくて、また春に、次は絶対取ってやるぞという気持ちで帰国しました。

オデン:諦めるんじゃなくて、火がついた感じですね!

入念な情報収集。ない情報は自分でつかむ

オデン:3年生の秋っていったら、そろそろ就職を意識する頃かと思います。

綾部さん:大学の学部が電気学科だったので、電気系の企業も考えましたが、やはりずっと航空系のことをしていたので、航空業界について調べていました。

オデン:航空業界っていったらエアラインがメジャーですね。ヘリコプターは珍しい。

綾部さん:グライダーをやっていると、エアラインのパイロットとして就職された方や整備士の方とは出会えたりするんですが、ヘリはそもそもの情報自体が少なくて…

オデン:それでどうされたんですか?

綾部さん:パイロットを目指している人がみんな読むマニアックな雑誌があるんですけど、そこのインタビューページにヘリコプターのパイロットさんが載っていて、その方にFacebookで連絡をとりました。

オデン:すばらしい行動力!

綾部さん:そうしたらその方とても面倒みのよい方で、私が「ヘリ業界ここはどうなんですか?」とか「ここが心配なんです」とか質問していたら、そんなに知りたいなら会ってあげるよって。それでお会いして色々と教えてもらいました。


オデン:どんなことを聞いたのですか?

綾部さん:実際の業務内容や職場環境などほとんど表に出ていないので、心配なこと質問して…。その方の勧めでヘリ業界の大手企業へ見学にも行きました。

オデン:このときからヘリコプターのパイロットを目指そうと?

綾部さん:いえ、当時は自分がプロの操縦士になることはぼやっとしか想像できず、決心とは程遠い状況でした。でもヘリにはものすごく魅力を感じました。

ターニングポイントとなった、スパルタ合宿。
“自分自身が変わった瞬間”

オデン:そしてまた春に、グライダーの免許をリベンジしに、アメリカに行かれたんですね?

綾部さん:帰ってきたらライセンス受かっているだろうし、就活に専念しようと決めていたんですが、行ったら行ったで…

オデン:何があったんですか?

綾部さん:この時、お世話になったインストラクターがとても厳しかったんですよ。初め11人いた受講生が1人減り2人減り…気がつけば2人しか残っていませんでした(笑)

オデン:減り方がすごい…

綾部さん:私も何度も、「お前には無理だ、日本へ帰れ」「お前の考えていることは全て間違えている、赤ん坊から人生をやり直せ」など、散々言われて(笑)。涙を堪えきれないことも多かったですが、これがラストチャンスと思っていたので、何があっても絶対にライセンスを取ってやるって。諦めて帰る選択肢はありませんでした。

オデン:強いですね。私だったら心折れそうです…

綾部さん:個性が強くて、伝え下手のインストラクターではあったんですが、彼の言うことは正しくもあって…。目標達成までの効率の悪さや主体性の無さ、思考の浅さ、一人で空を飛ぶということの責任の欠如など、そういったことに人生で初めて気づかされ、自分自身が変われた瞬間でもありました。

オデン:厳しいコーチの元で鍛えられたんですね。

綾部さん:この時の頑張りを教習所のオーナーや現地の方々が見て、応援してくれて! 座学も難しかったので、自分から積極的に話しかけて教えてもらったり、とても仲良くなりました。

オデン:それで結果のほどは?

綾部さん:3週間で取って帰る予定でしたが、試験にパスできなくて。事前に取っておいた帰りの飛行機のチケットを捨てて、帰国を1週間延ばしてなんとか取りました。

オデン:やり遂げましたね!

綾部さん:ええ、でも飛行機代はほんとうに惜しかったです(泣)

オデン:安くないですものね。ところで、4年生になる春の話ですよね。帰国後は就活を?

綾部さん:それが…、マニアックな話になるんですが、グライダーはエンジンがなく、地面から飛び立つときは飛行機でひっぱってある程度の高さまであげるんですね。この牽引することをトーイングっていうんですけど、グライダーが楽しすぎて、トーイングも自分でやりたいと思ってしまって。次は飛行機ねって。そんな会話があって帰国したものですから、就活どころじゃなくて。

オデン:(笑)また夏に行かれたんですか!?

綾部さん:はい。夏は夏で、そのオーナーのところを手伝いながら、飛行機のライセンスを取ろうとしたので、やることが盛りだくさんすぎて…。毎日睡眠時間が3時間くらいでした。

オデン:苦学生的な…

綾部さん:その生活が3週間、割と死にそうになりましたがなんとか。自分の中でやりきったという経験が自信につながりました!

◇◇◇
ここまでお読みいただきありがとうございます。
後編では、操縦士を目指す決意、進路のことで親に泣かれた話、実際の就職活動のことなどをお届けします。

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書いた人:しごとの道しるべ 編集部員 オデン

新卒で入った会社は、先生と呼ばれる親より年上の所長とふたりきりの職場でした。入社後すぐの挨拶まわり、スーツを着た人がみな同じに見えて、同じ方に2度自己紹介をするという失態が忘れられません。現在は、育児と仕事の両立に格闘中。

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